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ミオちゃんというのは智瑛が追いかけているアイドルグループの女の子で、眼鏡が特徴の俺から見ても凄く可愛い女の子だ。
智瑛はミオちゃんのイラストを描いてネットにアップしたり、こうしてグッズを作ってオタク仲間とコンサートに行ったりしている。このイラストやらグッズがかなりハイクオリティで、ネットでもかなり人気のようだった。
「優太も行く?作ってあげよっか?Sサイズ!」
「見られたら困るんじゃないのか。」
「嘘だよーん。優太と出掛けてるところなんて誰かに見られたら俺後ろから刺されそうだもん。卒業してからね!」
「安心しろ、ミオちゃんのコンサートには卒業しても行かん。」
「ええ〜、生ミオちゃんの可愛さは格別なのになぁ…」
智瑛は、俺と付き合っていることを学園の人間に知られるのを極端に嫌がる。
智瑛と俺が付き合っているのを知っているのは、生徒会長の大河内だけ。口が軽そうな会計の新井なんかには絶対知られるわけにはいかない。
なんでも『俺みたいなオタクとみんなの浅尾 優太が付き合ってるなんて知られたら俺の明日がない!』だそう。付き合い始めてすぐ俺が智瑛を映画デートに誘った時の台詞だ。アレはかなり凹んだ。
それ以来俺たちは秘密の逢瀬をここ美術室で重ねている。
しかしそれも、智瑛の気紛れで一方的に打ち切られることもしばしばだ。
「よし、じゃあこのデザインでいこう!ありがと優太、俺部屋に戻って作業するわ!」
「あ、おい!」
そう、こんな風に。
宣言するや否や智瑛は猛スピードで荷物を片付け、じゃ!と軽い調子で去って行った。
後に残された俺は、呆然とその後ろ姿を見守るだけ。寂しさに少しだけ痛む胸を無視して、俺も美術室を後にした。
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