第五章 てのひらは君のため

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第五章 てのひらは君のため

 事態の改善に乗り出して三日が経った。  みーこや友達が協力し、違う学年の子まで真実を広めてくれたおかげで、漣里くんに関する悪評は消えるまではいかないまでも、鎮静化はしてくれた。  昨日、漣里くんはクラスの子に突撃され、噂の真相について根掘り葉掘り聞かれたそうだ。  漣里くんが全ての質問に対して正直に答えると、その子は同情を示した。  その子に引っ張られる形で、昨日は設営班のクラスメイトと一緒にペンキ塗りをしたらしい。  屋上で独り寂しく読書していた漣里くんが!  皆と一緒に文化祭準備を!  昨日の夜、電話越しにその報告を受けて、本当に泣きそうになったと伝えると、漣里くんは大げさだと言っていた。  でも、漣里くんだって絶対に嬉しかったはず。  喜びついでに、お互い毎日お弁当だし、たまには一緒に学食なんてどう、と誘ってみると、漣里くんもすぐに同意してくれた。  というわけで、私は学校の昼休憩時間、漣里くんと食堂前で待ち合わせしていた。  わかってくれた子もいるけれど、まだ誤解は完全に解けていない。  それなら学年問わず、多くの生徒が集まる食堂で、私と漣里くんが仲良くご飯を食べる現場を見てくれたら、漣里くんも普通の人間なんだと認識を改めてくれる人もいるかなと思ったんだ。  ……というのは建前で、本音は私が漣里くんの彼女だって皆にアピールしたいだけだったりもする。  何より、彼氏とお昼に学食デートっていうのは心躍るもんね!  食堂前でそわそわしていると、漣里くんの姿が見えた。 「漣里くん」  手を振ると、漣里くんも私に気づき、歩み寄ってきた。 「待った?」 「ううん、私もさっき来たところ」 「そう」  そうだよこれだよ!  学生カップルとして、一度はやってみたかったんだよ!!  幸せを噛み締めつつ、笑顔で合流し、開きっぱなしのガラス扉を通って食堂へ。 「今日のA定食は野菜炒めで、B定食は焼肉みたいだよ」  メニュー表を確認して、振り返る。 「俺はBにしよう。真白はどうする?」  もう漣里くんは私を「深森先輩」なんて他人行儀に呼ばない。  人前だろうと遠慮なく名前で呼んでくる。 「私は野菜炒めにするよ。最近ちょっと体重がね……」  私は遠い目をした。  夏休みに漣里くんと甘いものめぐりしすぎた代償プラス、食欲の秋のせいかと思われます。 「そんなの気にしなくても、食べたいものを食べればいいのに」 「いいえ、これは女子のプライドの問題です」 「そういうもんなのか?」 「ええ、そういうものなんです」  私はしたり顔で頷いてみせた。 「ふーん」  漣里くんは適当に返事をして、他に興味を惹かれるものがあったのか、ふいっと顔を逸らした。  長いまつ毛に縁どられた大きな目が、メニュー表を眺めている。  自覚はないらしいけど、漣里くんはとっても格好良い。この場にいる誰よりも。  私はみーこのような美人じゃないけど、せめて体重面だけでもコントロールして、漣里くんにふさわしい女子でいたいんだよ。
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