七つの大罪

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七つの大罪

 4月12日日曜日。リビングの鏡の前で白いワイシャツを着て、黒いネクタイを締めていると宅配便が届いた。その配達員は昨日から数回目で苦笑いしていたが、溝端賢士は神妙な面持ちで唇を結んでサインをして受け取った。  差出人の名前は早坂玲奈。去年のクリスマスに別れた女性である。  賢士(ケンジ)は澄んだ眼差しでその中身を想像し、リビングに戻って約45センチ四方の箱をカッターナイフで丁寧に開けた。  透視するまでもなく、中には(イバラ)の冠が入っている。それも手作りの薔薇のツルを使用したリアルさ。そんな贈り物がテーブルとフローリングの床に散乱している。  毎年、復活祭になると恒例のように別れた女性たちから茨の冠が贈られ、一年に一個ずつ増えてこれで七個目。賢士は七つの大罪だなと思って苦笑し、それを頭の上にのせて罪を(あがな)うように鏡に映す。
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