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足元に転がっている酎ハイを見つめて、何回目かの裕樹と付き合った2年間を振り返る。
本当に、平凡だった。普通のカップルが出かける場所でデートをして他愛もない話で笑い合って、時には喧嘩して仲直りをして、そんな2年間だったけどわたしは楽しかった。
いつから裕樹はそんな風に思っていたんだろうな。
「おねーさん、こんなところで何してるの?」
突然頭の上から声をかけられた。突然の声にビクッとして恐る恐る頭を上げると帽子を目深にかぶってマスクをしている男の人が目の前にたっていた。
やばい・・・不審者だ。
こんな深夜に公園のベンチに女がいればそりゃあ変な人も声をかけてくるだろう。たった今彼氏にふられたばかりでナンパ男の口車に乗るような軽い女ではない、と心に誓い目の前の男を見据える。
「少しコンビニに行った帰りで今から帰るところですけど」
警戒心を含むように返すとその男は隣に座ってきた。
わたしは、座った男から少し距離を開けて散らばった缶を拾い上げる。
「少しコンビニにって感じの中身じゃないよね。そんなに酎ハイの缶開けちゃって」
「これはそこの自動販売機のゴミ箱が荒れてたから拾っただけでわたしが買ったんじゃないです」
酔った頭で言い訳を辻褄の合わない言い訳を言う。早くこの場から立ち去らないと。
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