彼だけのために

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ー現在 「海岬(みさき)ちゃんが一人暮らしなんて心配だわぁ。  だめよ。やっぱりおばちゃんと住みましょ。」 大人は、時に残酷だ。 心にもない事をホイホイと口にする。 「伯母さん。大丈夫です。だって、みんな…家族が見守ってますから、」 「そうよね。まーくんも、ゆーちゃんもみんな、あなたの事、見守ってるわ。」 時に子供も、自分を守るため嘘をつく。 「それに、伯母さんとは、学校でも会えますよ。」 「あらぁ、こんな伯母さんとは、一日中は一緒にいられないって?」 そんな冗談を言って、甲高い笑い声をあげた。 伯母は、父が所有していた学校を相続した。 だから、こんなガキの世話をする。 「じゃ、ちゃんと『はやね、はよおき、』」 『別れ際は手短に』その手本を伯母はやってのける。 「わかってるわよね?」 念押しするかのように私の目を見て強く言った。 「はい」と適当に返事をして私は、彼のことで頭がいっぱいだった。 おばが帰ると同時に私は、家を飛び出した。
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