ブラッドレイン

(18)雨垂れ

愛するクラウド

やあクラウド。
天国は快適かい？
現実は地獄さ。
君がいない世界なんて。
ねえ。
ああ。
クラウド。
もう。
サニーを殺していいかい？
サニエル・グレースカイ。
君のパパだよ。
今病院にいる。
君が大好きなパパさ。
もう限界だよ。
殺したいよ。
ああ。
ほら。
急がないと。
本当に殺しちゃうよ。
私はブラッドレイン。
雨の日の殺人鬼。
もう何人殺したかなんてわからない。
君のパパを殺すなんて朝飯前さ。
ああ。
でも。
君が止めてくれたら考え直しても良いよ。
泣いて。
怒って。
何なら。
私を呪ってもいい。
殺しても構わない。
こんな気持ちになるなら。
君に会えるなら。
さ。
ねえ。
クラウド。
君は本が好きだから知っているかな？
雨垂れは境界線なんだ。
生と死。
あの世とこの世。
死者の君と生者の私。
境界線。
クラウド。
私は。
私はね。
もう。
雨の日になっても。
誰も殺さないんだ。
殺せないんだ。
ただひたすら。
雨垂れを見ている。
君にもう一度会う為に。
見知らぬ誰かを殺す時間が勿体無くて。
ただ雨垂れを見ている。
ブラッドレインは死んだ。
もういない。
ここにいるのは。
君に。
クラウド・グレースカイに会いたいだけの。
ただのレイモンド・ブラックさ。
私は。
ひたすら。
君を。
待ってる。
待って。
待って。
待って。
待ち続けてる。
クラウド。
私のクラウド。
クラウド・グレースカイ。
ああ。
この手紙もまた。
君の家のポストで。
朽ち果てる運命なんだろうな。
いつからだろう。
君に届かない手紙を書いているのは。
読まれないとわかっているのに。
可哀想に。
可哀想だな。
レイモンド・ブラック。
クラウド。
クラウド。
ああ。
君が見えない。
見たい。
会いたい。
会えない。
クラウド。
クラウド・グレースカイ。
ああ。
これは罰なのか。
沢山の命を殺めた罪の。
私の。
ああ。
例え死んでも。
地獄行きの私は天国にいる君に会えない。
だから。
どうか。
私が死ぬ前に。
会いにきて。
クラウド。
私のクラウド・グレースカイ。
ずっと。
ずっとずっと。
待ってるから。

君のレイモンドより。