熱い冬

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 今回もその延長か、と夏乃は思った。こんな集団で来るとは想定外だったが。 「個別に押しかけても手間だと思ったので」  そう答えた愛利は、二週間ちょっとの間毎日のように顔を合わせていたせいか夏乃に慣れた様子だ。  その愛利は、隣で緊張している様子の少女の肩をぽんと叩く。 「は、初めまして夏乃さん。情報部の白銀ゆりといいます。その……愛利から、恋愛の悩みなら夏乃さんに覗ったほうがいいと聞いてついてきました。迷惑だったら帰ります」  唯一夏乃と接点がないせいか、ゆりという少女は遠慮がちだ。ほうっておいたら本当に回れ右して帰りそうだったので、夏乃は引き止めた。 「二人も三人も代わらないよ。おいで」  その言葉でほっとしたように表情をゆるめるゆりに変わって、由香が席を立つ。隣の技術開発室に行くから、この部屋は自由に使ってくれて構わない。そういい残して、由香は部屋を出て行った。夏乃が早くこの支部の仲間たちと打ち解けられるようにという配慮だろう。  由香が出て行ったところで、夏乃は席を移動する。長テーブルと三脚のパイプ椅子を三人に譲って、自分は由香の机に寄りかかるようにして立った。 「で、いっぺんには無理だから杉野から行こうか」
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