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す、と腕を組んで美緒のほうを見ると、彼女はあの、と恥ずかしそうに切り出す。
「いままで師弟として一緒にいた時間が長すぎて、いまさら秋時に異性として見てもらえるものかと……年も離れてますし」
美緒の悩みになるほどな、とうなずくうちに、愛利がえ、と声を上げた。
「秋時くん美緒さんのこと大好きだと思いますけど?」
というと? と夏乃が聞くと、愛利はこの町で女性ばかりを狙う通り魔が出た際、秋時がずっと美緒の護衛をしていたことを話してくれた。自分が非番の日でも美緒を家に送り届けるためだけに支部に顔を出していたこともあると聞いて、納得する。
「それは間違いなく好かれているな」
「でも、それはあたしの男嫌いを知ってるから、親切心で……」
「期間は?」
美緒を無視して夏乃が愛利に聞くと、彼女は二週間ちょっとですと答えた。夏乃はすぐに答えを導き出す。
「親切心だけで二週間以上も護衛はできないだろう。自分の帰宅ルートとかぶっていない限り。ましてや非番の日までわざわざおまえのためだけに支部に顔を出しているときたら、ベタ惚れだな」
「ええっ……」
心底意外そうにいわれて、夏乃は苦笑した。
「信じられないか? 年が離れているし、これまで素で接してきたのだから惚れられるようなことをした覚えもない。一体自分のどこに好かれる要素があるのか、好かれていることに自信を持てないと?」
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