熱い冬

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「で、杉野が弟子と付き合う方法だが」  その前置きに肩を跳ねさせる美緒は、純真そのものだ。あまりこなれた誘い方はできないだろう。 「そうだな、男嫌いを利用して距離を縮めることから始めよう。まずはこういうんだ。男嫌いを直す練習に付き合ってほしいと」 「練習?」 「そう、おまえの弱点を逆手に取って利用しろ」 「なにをすれば?」  不安げに聞いてくる美緒に、夏乃は不敵に微笑んだ。 「まず、そう告げたら秋時に手を出してもらうこと。で、最初は手を繋ぐことから始めろ」 「ええっ、付き合ってもいないのにですか?」  驚いて顔を真っ赤にする。どうやら美緒の貞操観念のハードルは高そうだ。 「手ぐらいどうってことない。それにあくまで〝練習〟という名目なら、相手も不審に思わないだろう? おまえの男嫌いを知っているんだから、それを克服する練習に付き合ってくれといわれて断るとも思えない。難色を示したなら試しに、秋時が嫌なら他の男と練習するとでもいってみろ。血相を変えて引きとめるはずだ」  夏乃の言葉に、愛利とゆりが目に浮かびますといってうなずいた。どうやら秋時の美緒に対する思慕は、当人以外には筒抜けのようである。 「練習に付き合ってもらうという名目で、毎日十分くらい秋時と手を繋いでみろ。そのうち心の距離も近くなるし、おまえの男嫌いも秋時に限ってはマシになるだろう。そうなったらこういうんだ。秋時なら怖くないってな」
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