熱い冬

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「秋時なら……」  繰り返した美緒に、夏乃はうなずいた。 「男嫌いのはずのおまえがいうからこそ特別感がある。その上で、男は嫌いだけど秋時のことは好きだとでもいってみろ。やつにとっては感無量だ。なにせすべての男という生き物の中で自分だけが好きだといわれたも同然だからな」  美緒の男嫌いは、恋愛には欠点でしかない。でもそれを秋時だけは例外とできたなら、美緒は世界中で秋時だけしか異性を受け付けないということになる。正真正銘秋時だけの美緒だ。  もしかしたら美緒の男嫌いを気にして手を出せていないのかもしれない秋時も、自分に限ってのみその枷が外れたと思えば、付き合ってくださいという告白もしやすくなるだろう。  男嫌いも逆手に取れば、美緒だけの強力な武器になる。  そういって聞かせると、美緒はやってみますとうなずいた。できるかな、どうかな、といった戸惑いは見えたが、きっと大丈夫だろう。  さて次はどっちから行くんだ? と、夏乃は愛利とゆりを見た。愛利のほうが、ゆりに笑顔でどうぞと告げる。ゆりはありがとうと礼をいって、夏乃を見上げた。 「あの、とてもわけありな戦闘員の男の子を好きになってしまって……どうしたらおつき合いできるでしょうか」 「相手の境遇による。話してみろ」
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