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急に押しかけてしまったけれど、夏乃は嫌な顔一つせず相談に乗ってくれた。
実はこの二週間ちょっとの間に、愛利は恋心を自覚してしまったらしい美緒からどうしたらいいのだろうと度々相談をされていたのだ。恋愛に関しては愛利のほうが先輩だからと、美緒どころかゆりにまで縋られて大変だった。
とはいえ愛利だって夏樹のことでいっぱいいっぱいで、夏乃に相談していた身である。人にアドバイスできるほど大人でもないし知識もない。
夏乃が回復したら美緒とゆりのことも相談しようと思っていたところに、彼女はまさかの結婚報告をしに支部へと舞い戻ってきた。
まだまだ恋愛慣れしていない自分たちにとって、夜の世界の経験も豊富で、様々な障害を乗り越え莉櫻と結ばれた夏乃は大先輩だ。
ぜひ知恵を借りようと彼女がいるらしい由香の部屋に押しかけてみれば早々に快諾してくれて、愛利があれだけ悩んだ美緒への対処も完璧だった。さすが経験者だ。
次はゆりから道冬のかいつまんだ事情を聞いて、夏乃はふぅんと形のいい唇を歪める。
「苦労人で後ろ向きか。まずは前向きにすることだな」
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