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夏乃と莉櫻の再会が叶った、翌日のことだった。
季節はあっという間に十二月の半ばを少し過ぎていて、街を歩けばクリスマスソングを耳にする日々だ。鬼憑き狩りと交戦した十一月の暮れが、大昔のことのように思えてくる。
その鬼憑き狩りこと森田拓と、水口理子、そして柿原亜紀の行方はようとして知れない。存在が明るみになってしまったせいか、身を潜めたようだ。忌みごとの実行にシリコンマスクまで持ち出してくる人たちだ。本気で隠れられたら簡単には探せない。
支部内での犠牲者を数人出してしまったが、あの交戦後に亡くなった鬼憑きはいなかった。
ひとまず脅威が去ったことで、夏樹たちは警戒を弱めていた。
「暇だなあ」
隣でぼやく秋時に、夏樹は待機だからなとうなずいた。
現在、夏樹、秋時、怜、道冬の四人は実行部の部屋で待機を命じられていた。美緒も待機組みだが、彼女はいま席を外している。だから秋時がぐでんとだらしなくなるわけだが、夏樹は心配になった。
「来週から復帰だろう? そんなんで大丈夫かよ」
道冬と美緒をかばって一時期生死の境を彷徨った秋時だが、いまは順調に回復していた。それでもまだ戦闘にはドクターストップがかけられていて、こうしていつも待機に回されているのだ。来週になったら通常任務に戻ってよしと医療班にいわれているが、いまのこの呑気さは、とても戦闘員とは思えないほどのゆるさだった。
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