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昨日は天使かと見紛うほどの純白のワンピースを身に纏っていた夏乃は、今日は打って変わって黒いタートルネックのシックなワンピース姿だった。髪はかんざしで鞠のように束ねられていて、昨日のような遊びもない。
そのまま葬式に行けそうな格好で、しかし夏乃は、真逆の報告をしたのだった。
「来週の二十六日からここに配属になる、荒井夏乃だ。よろしく頼む」
「はっ」
「うえっ」
「なっ」
「えっ」
夏樹、秋時、道冬、怜、全員が驚いた。
「荒井?」
驚きを含んだ問い返す声が四重にかぶる。
ついでに、全員の視線が莉櫻に向いた。この支部で「アライ」という読みの姓を名乗っているのは、彼一人しかいなかったからだ。そしてその彼は、夏乃に並々ならぬ恋情を抱いていた。
まさか、という全員分の視線を受けきれなかったのか、莉櫻が片手で顔を覆った。その莉櫻の代わりに、夏乃がごく淡々と説明をする。
「ついさっきこいつの籍に入った。もっとも仕事上は神原でかまわな……」
「えええええぇっ!」
こともなげに告げられた内容に、夏樹、秋時、道冬は絶叫した。怜は読んでいた本で口元を隠し、目だけで驚きを表している。
みんなを代表して、夏樹が聞いた。
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