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いったい莉櫻がなにをやらかしたのか、激怒している様子の夏乃は少しだけ顔が赤かった。先程までのポーカーフェイスがきれいにはがれて、血気盛んなこの部署に相応しい面構えになっている。
「だから、悪かったって!」
夏乃の下で謝る莉櫻は確かこの部署で一番強い戦闘員だったはずだが、早くも彼女の尻に敷かれる未来が確定しているように思えた。
「夏乃、機嫌直してくれってっ……マジで背骨折れっ……」
「うるさいな。じゃあ背骨とあばら、折られるならどっちがいいんだい?」
問いかけが物騒すぎる。なにもいえない夏樹たちの横で、怜が思い出したように微笑んだ。
「神原さん。六年前と変わってませんね」
六年前からこうなのか、とぎょっとした夏樹は、改めて夏乃と莉櫻を見やった。
(もうやだこの師弟)
ぼんやりとそう思ううちに、夏乃がどすっと莉櫻を踏んだ。そして夏樹たちに背を向ける。
「この、色ガキが」
低くいい放って、実行部の部屋を出た夏乃はバアンと乱暴にドアを閉めて行ってしまった。残された莉櫻はすぐには起き上がれないらしく、伸された姿勢のままいたたた、と小さく苦痛を訴える。
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