熱い冬

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「いま夏乃さん、色ガキっていわなかったか?」  声を潜めて聞いてきた秋時に、いいましたね、と道冬が小声で返す。弟子の夏樹はいたたまれなくなって、うわーとドン引いた。いまだけ弟子やめていいかな、と、現実逃避をしたくなる。  そんな中で唯一の大人である怜は、真面目な顔で莉櫻にいった。 「神原さんが帰ってきて嬉しいのはわかりますが、病み上がりの女性になにをやらかしているんです。身の程を弁えないと殺されますよ?」  物騒な発言が、間接的に夏乃という人の内面を夏樹たちに伝えてきた。そんな人だったっけと夏樹は呆気にとられるが、考えてみればちゃんと話したこともない。夏樹の知る夏乃は、怜たちの知る夏乃の半分にも満たないのだろう。  ようやく床から起き上がった莉櫻は、いってぇといいながら背中をさすった。 「そのスリルがさ、他の女と違うからいいんだろ。抜き身の刃のきれいさと危うさみたいなのを持ってるのが」  その莉櫻の弁明に、怜は処置なしと肩を竦める。 「変わりませんね。何度叩きのめされても追い縋って。挙句今度は結婚ですか」 「そうでもしないとすぐどっか行きそうだったからな」  だからって交際ゼロ日で結婚、と夏樹はその大胆さに呆れたが、怜は息をついた。 「神原さんがよく承諾してくれましたね」 「代わりに浮気したら縁もろともスパッと俺もぶった斬るっていわれた」 「でしょうね。ああまったく、あの人も変わりませんね」
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