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それから、手水舎で心身を浄めた私たちは、二拝二拍手一拝の作法でめいめいに祈りごとを唱えたあと、鈴鹿橋を渡り、奥宮へと続く道を歩き始めた。
奥宮は本宮より更に北へ五百メートルほど進んだ場所に位置している。かつての社殿は奥宮にあったそうであるが、貴船川の氾濫によって失われ、天喜三年に現在地へと移転したという。
食事処の並ぶ道を五分ほど歩き続けたところで、奥宮の神門へと続く参道が見えた。その入り口に鎮座する朱塗りの鳥居の向こうには、思ひ川が清かに流れ、架かる橋を渡れば御神木である大きな杉の木が参道の右側に連立している。
そのまま足を止めることなく鳥居を潜ったところで、私はある違和感を覚えた。
生い茂る古い木々たちが太陽の光を遮り、参道は暗く陰っている。伸びる道は緩やかに左へと婉曲し、道が見えなくなる丁度その位置で、道の真ん中に何かの影か落ちていた。
「なんやあれ……」
今宮先輩は訝しい表情で口元に手を添え、目を凝らしながら足を進めていく。そして、五メートルほど歩いたところで、私たちはそれが何であるのかを認識した。
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