135人が本棚に入れています
本棚に追加
「先輩……あれ、人ですか」
「あぁ、倒れてはる」
その言葉と同時に先輩は駆け出した。離れていく背中を慌てて追いかける。しかし、彼は横たわる人影の少し手前で減速し、ついには立ち止まった。
「どうしはったんですか先輩、はよ助けやな……!」
そう、茫然と立ち尽くす彼を追い越そうとしたその瞬間、先輩は私の手を掴み、強引に身体を引き戻した。
「紫野ちゃん、見たらあかん!」
そして、彼の大きな掌が私の視界を塞ぐ前に、私はそこに広がる光景をはっきりと見てしまった。
長い黒髪の女性の胸に突き刺さった大きな釘と、白いワンピースを染める赤黒い血液を。
最初のコメントを投稿しよう!