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しかし、私はそんな彼がとても魅力的な人だと感じていた。
夏に吹く涼風のように爽やかな容姿や、ふとした時に見せる子供っぽい笑顔、気にかけてくれる優しさもそうではあるが、決してそれだけではない。
あらゆる学問についての聴講を繰り返しているためなのか、彼は人一倍の知識を溜め込み、それを無暗にひけらかす訳でもなく、ひそやかに自身の研究へと役立てているらしい。どんな学問を修め、どんな研究を推進しているのかは知らないが、彼は京都にまつわる古い伝承や伝説、逸話を愛し、それについて学ぶために京都のあらゆる場所を巡っているようだった。
ある時、退屈をもて余す私に京都の神社仏閣にまつわる伝説を説いたことがあった。その話の内容も然り、彼の語り口調がとても興味深く、泉のように涌き出る知識の豊かさに、たった一度で虜となってしまったのである。
それはいわゆる恋というものだ。
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