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白亜の城 3
しばらく誰も床に倒れたまま何もしゃべれなかった。
エルシュトは人形にとどめを刺したとはいえ、満身創痍に変わりはなかったし、レヴも額から血を流しているし、ユーリスもそこまで怪我を負った感じではなさそうだが床で大の字になって転がっていた。
息を整えてのろのろと互いに応急処置をした後、ようやく息を吐いてレヴは砕けた人形を見つめた。
「一体なんだったの、あれ……」
「人形の身体の中に魔法陣が描かれてる。
ああ、古代魔術文字だね。血を使って動くようにしてあるんだ」
確かに人形から赤い血がどろりと流れている。精巧な作りだけあって人を殺してしまったかのような錯覚をする。
その考えを振り払うようにエルシュトがレヴの背をどんっと叩いた。
「それにしてもやるじゃないか。
君達のおかげで助かったよ」
「それは私の台詞ですよ!
一番最後エルシュトさん死んじゃうかと思ってたんですからね。あれ、どうやったんですか?」
「ああ……それはね」
エルシュトは床に落ちていた何かを拾うとそれをレヴに見せた。その手にあったのは粉々になった薄く青く輝く石……。ユーリスに見せた幻を見せてくれる護符だ。
「ユーリスこれ、私にくれるって約束したやつじゃん!」
「おや?そうだったのかい?」
エルシュトがレヴの言葉に申し訳なさそうに頭を書いた。
「別に君にあげるとは言ってない。
買うなら売ってあげるとは言ったかもしれないけど」
はぁっとため息を吐いたユーリスはレヴを無視して人形を調べ始めた。ユーリスの横でヴァニラも一緒になって人形の中身を覘いている。
数分後にユーリスは人形の中から見つけたらしいメモ書きをエルシュトに渡すと、説明をした。
「どうやらこの場所は処刑場だったみたいだね。
人形の中からどこかの鍵とメモが見つかった。恐らくだけど……」
「その場所に行きたい」
「……言うと思ったよ」
遮られるようにして被らせられた言葉にユーリスは苦笑して答えた。
メモが書き記した場所はどうやらこの場所から一つ下にある地下にあるようだった。どうやら壁に仕掛けがあるらしく、正しい順番に少し出っ張った場所を押し込むと音を立てて下への階段が現れた。
「うわぁ、なんか冒険って感じがする!
わくわくするね」
「そう?」
いかにもな仕掛けにレヴが飛び跳ねて喜んでいるのを細目で見つめる。そんな二人を急かすようにエルシュトがこっちだと呼んで真っ先に階段を下りていく。
下の階にも真っ黒な魔物はいなかった。ただ、所狭しと本棚が並べられている。この部屋の主らしき日記も見つけた。
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