白亜の城 2

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白亜の城 2

 翌日、おかみさんが指定した場所にくると、彼女はすでにそこで待っていた。  立派な青く輝く鎧を着て、その頭には立派な水晶のようなツノと腰には大きな剣を差していた。  想像以上に立派な格好をしている彼女にレヴもユーリスもぽかんと口を開けてみていると、彼女はこちらに気づいて手を振った。 「やあ、君達来たね」 「すごいですね」 「まぁ、昔は結構やんちゃしてたからね」  おかみさんは力拳を作りながらそう答える。  レヴは彼女の周りをぴょんぴょんと跳ねながら見回った。 「すごい!立派な鎧ですね!」 「ふふ、そうだろう。この鎧はかの鍛冶で有名な火の国で拵えてもらったものだからねぇ」 「火の国!?」  レヴはユーリスを見ると、ふぅと息を吐いてユーリスが答える。 「ここから西にずっと行った先にある国だ。海を一つ越えないといけない」 「へぇ~遠いね!  いいな、いつか行ってみたい!」 「あはは、そうだね。君も一度行って見るといい」  おかみさんの言葉にはいっと元気よく答えるレヴ。それをじっとユーリスが眺めているのに気づくとおかみさんは、レヴとユーリスの格好を見て満足そうに頷く。 「準備は問題なさそうだね。  じゃあ、灰都へ向かおうか」  その声に二人は頷くと人気のない暗雲漂う方向へと向かって歩き出した。  灰都へ向かう道は行く人が少ないというより、ほぼいないせいで草が生い茂って草葉を切りながら進む必要があった。  おかみさん―エルシュト―は慣れた手つきで剣を振り払いながら雑草を切り伏せていく。  雑草を刈るのは生まれた時からやってるからね、と。  その言葉にレヴも負けじと槍を振ろうとするがそれはユーリスが止めた。初めての依頼なのだから、ここで張り切って体力を使い切っては危ないとのことだそうだ。  ユーリスの話はもっともだ。  レヴは大人しくエルシュトの後をついて歩いた。  三日間の野宿をすることになったものの、エルシュトが作る料理が美味しかったのと三人で分担して夜の見張りができたのでそこまで苦にはならなかった。むしろ三品ほど簡単で美味しい野外調理方法をエルシュトから学ぶ正直これだけでもこの依頼を受けて良かったと思ったくらいだ。  ちなみにユーリスは料理の腕はあまりよろしくなかった。真面目に料理をしているのだが、ちょうどいい感じの量がわからず、失敗しているようだった。しっかりとしてるのに意外な欠点だ。  道中の魔物もそこまで強くなく、ユーリスが心配していたよりも安全に進んでいき、無事白色のの大きな建物が見えてきた。   「あれが灰都……」 「そうだよ」  レヴの呟きにエルシュトが答える。  いかにもな暗雲が灰都を全体を漂っているせいか、建物は白いのに暗く感じられる。それに静かすぎる。 「灰都には魔物が住んでるんじゃなかったけ」 「いるよ」  目の前の灰都をエルシュトが睨んで言った。獣の気配は一切しなかったが、エルシュトが言うならそうなのだろう。  レヴはいつでも戦えるように背から槍を下ろす。 「薬草ってどこにあるの?」 「この灰都の一角にある建物の中だ。  昔は薬草園か何かだったらしい」 「薬草園?」  エルシュトの言葉にユーリスが反応する。 「そこには依頼の薬草以外も生えてるのか?」 「さぁ?  見たことがないからわからないよ。けど珍しいものもあるかもしれない。  気になるかい?」 「……商人として少しは」  ユーリスが少しだけ間を置いて答えると、エルシュトがあっはっはと大口を開けて笑う。 「素直だねぇ」 「物珍しい薬草は研究者などに高く売れるから。  それに知り合いに薬草を欲しがってる人がいるんだ」 「いいよ。  あの依頼は目的の薬草さえ手に入ればいいし、こんな灰都にくる奴らなんてそうそういないしね。珍しいやつがあればとっていけばいいさ」 「そうさせてもらう」 「あのー、そういえば依頼の薬草“ベラルィ“ってどんな薬草なの?  流行り病に聞くってのはわかったけど……」  頬をぽりぽりと掻きながらレヴは聞く。薬草の形や色などは依頼に貼ってあった絵で確認したが、それ以上のことは知らないのだ。 「商人さんの方がよく知ってそうだし、説明はそっちに任すよ」 「別にそこまで詳しくはないけど」 「私も詳しくはないよ。  でも君の方がうまく説明できるだろう。それに私は周囲を警戒してる方が性にあってるからね」  ユーリスは一度だけ息を吐くとレヴの方に向き合う。うさぎのヴァニラもトトっとユーリスの近くに寄るとその赤い目をちかちかと光らせる。 「要、薬草の採取方法などの展開」 「……確かにヴァニラの言う通りだな。  レヴ、薬草の“ベラルィ“だが、薬になる部分は根っこの方だ。表面に出ている葉には毒があるから素手では触れない方がいい。  あと、体力を回復させるブルーポーションと混ぜると猛毒になるから絶対に混ぜたりはしないように。  火傷を負ったみたいな感じで皮膚が焼けただれて、数週間はずっと痛みにのたうち回る目に合うからね」 「わかったよ!」  レヴが勢いよく返事をするとユーリスもそれ以上は何も言わない。あれ?これで説明終わりなのかな?そう思っていると、ヴァニラがぴこりと音を鳴らした。 「生体反応二体確認」
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