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「お市、これで良かったのか。今から追えば、まだ間に合うぞ」
「もう覚悟は出来ております。生き恥は晒しませぬ」
「そうか……」
勝家はお市の方の覚悟を汲み取り、静かにうなずいた。
天正11年(1583年)4月、北ノ庄城は落城。柴田勝家とお市の方は、焼ける城の中で自害して果てた。
姉妹は秀吉の陣中から、城が焼ける様を見た。堪らず、初と江は泣き叫んだ。茶々は涙を流すまいと唇を噛み締め、妹達の肩を抱いた。
火の粉が、二度目の落城を経験した三姉妹の空へ舞い、消えていった。
秀吉のもとに茶々、初、江の三姉妹が、連れて来られた。
「姫様方、よくぞご無事で。この秀吉がおりますれば、何の心配もございませぬ」
秀吉はにこやかに言うが、姉妹の表情は硬く、茶々は射貫くように彼を見ていた。そんな彼女らを気にする様子もなく、家臣に三姉妹の世話を任せた。
北ノ庄城落城後、佐久間盛政は逃亡するも捕らえられ斬首。首は六条河原にさらされた。
また、岐阜城の織田信孝(信長の三男)は、兄・織田信雄(信長の二男)に城を包囲され降伏。信雄の使者に切腹を命じられた。
一月籠城を続けた滝川一益はついに開城し、剃髪。丹羽長秀のもとで蟄居した。
こうして、織田勢力を二分した賤ヶ岳の戦いは秀吉の勝利に終わり、天下統一への第一歩となった。
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