第2章 交差する妬みと思い出

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馬鹿丁寧にいちいち応じていたら、こちらの身がもたない-すぐに悟った。 第一、どんなにやんわりと否定してみせても、結果は同じなのだ。 『なにそれ、厭味?』 『その程度の顔でいい気になってんじゃないわよ』 『どうせ色仕掛けで迫ったんでしょ』 笑顔の裏の女の顔ほど、世の中怖いものはない。 どっちにしろ恨まれるのなら、相手を気遣う必要など少しもない。 適当に受け流してやればいいだけだ。 無駄な事に使う労力なんて、自分はこれっぽっちも持ち合わせてなどいない-本当に。 「幸せの絶頂だからこそ言える、余裕の台詞よねえー」 案の定の台詞が奏子から聞こえ。 更にもうひとりの友達である萌々香(ももか)も、それに乗っかってくる。 「奏子の言う通り!あんなにイケメンで、優しくて、奥さん一筋な素敵な旦那さま、そうそういないわよ。しかも次男で、義理の両親とも一緒に暮らさなくていいだなんて。姑との同居で苦しめられてる嫁が、世の中どれだけいると思ってんのよ。加えて、旦那の実家は地方有数の資産家で、ダーリンは国家公務員のキャリア?それだけ恵まれてんのに、大した事ないとか言ってると、そのうち後ろから刺されるよ」 本人曰く『姑との同居で苦しめられてる嫁』の筆頭の萌々香の言葉は、それなりの真実味を帯びて玲那に伝わる。
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