第2章 交差する妬みと思い出

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土曜日、昼下がり。 表通りの馴染みの、フレンチレストラン。 お昼のコースで一番高いものを注文し、大学時代からの女友達ふたりとで玲那は優雅に食事を楽しんでいた。 一年に一回、離れて暮す旧友との再会の日。 特別な日の、たまの贅沢だった。 真っ昼間からアルコールなんて、いつ振りだろ-白ワインを口に含み、グラスに残った口紅の跡を拭いながら玲那は欠伸を噛み殺す。 隣りに座った友人が、盛大な吐息を漏らした。 「しかしほんっと、あんたが羨ましいわよ」 ワインをグラスを手にした奏子(かなこ)に心底妬ましい表情をされ、玲那は内心うんざりせざるを得ない。 ここ一年、どこで誰と会っても、十中八九この話題を振られる。 そして皆-大抵は女性にだが、決して大袈裟などではない妬みのそれを向けられるのだ。 最初の頃はそのひとの気に障らぬよう、決して自慢にならぬよう、注意深く対応もしていたのが。 「人間顔じゃないし、仕事に貴賤もないし、お金がいくらあっても不幸なひとは不幸だよ。隣りの芝生は青く見えるものよ。第一私達、あんたが思ってるほど贅沢な生活なんてしてないし。こう見えて悩みだって、人並みにちゃんとあるんだからね」 素っ気なく呟き。 玲那はスプーンを片手に、澄んだコンソメスープを喉に流し込んだ。
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