第2章 交差する妬みと思い出

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最後に物騒な事をさらりと付け加えられ、さしもの玲那も少々怯んでしまう。 「…そりゃ、確かに恵まれてるなとは思ってるよ」 玲那は言葉を選びつつ、重い口を開く。 そんな事は他人にとやかく言われるまでもなかった。 そんなのは初めから、自分でよく分かっていた。 隣県の大学を出て。 地元に戻って一般企業の受付をしてた。 取り立てて秀でた何かがあるわけでもない、極々普通のどこにでもいるOL。 社会人になって三年目の夏。 いつもよりも多めのボーナスに嬉しくなって、思い切って初めての一人旅に出た。 ドラマだと、よくこういう時に『素敵な出逢い』があったりするよね-そんな浅はかな考えが頭の片隅になかったと言えば嘘になるが、実際期待してたのはほんの1%ほど。 夏季休暇に有給をプラスしての、久し振りの大型連休。 いつかは行ってみたいと思っていた、日本有数の避暑地。 好きな所に行って、好きな物を食べて、普段なら躊躇してしまう高級ホテルや旅館にも泊まって-これから始まる旅に、胸踊らせていた。
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