第2章 交差する妬みと思い出

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予想以上に楽しい時が過ぎ、三日目の午後。 周辺を歩き回ってへとへとになり、知る人ぞ知る地元で人気のカフェに足を踏み入れた。 流石有名なお店だけあって全席埋まっており、席が空くのを待つお客さんも数人いた。 これから他に行く元気もなく、まあこんな事もあるよねと、スマホを暇潰しに眺めていれば-店員に声をかけられた。 『お連れのお客さまがお待ちです』と。 『お連れ』? 一人旅を満喫する自分に連れなどいない事は、明白だった。 それなのに店員に案内されるまま、いつしか足を進めてしまっていた自分がいた。 何故すぐに間違いを正さなかったのだろう。 何故その席まで歩いてしまっていたのだろう。 まだ明るい時間帯だったし。 お客さんも大勢いたし。 まさかこんな場所で、どうこうされる心配はまずない-そんな安心感も確かにあった。 でも何より興味があったのは-『お連れのお客さま』の事。 一体全体どんなひとが、自分を待ち構えているというのだろう-そんな素朴な疑問があった。 どきどきしながらその席まで案内されれば-そこにいたのが、賢哉だった。 その時はまさか彼が未来の結婚相手だなんて。
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