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◆◇◆
職員室にいるって言ってたよね。
でもこんなすれ違いが生じてしまうとは思ってなかったな......。
でも言うなら今しかない。こんなところでぐずぐずしていられない。
もう抑えられないんだ、我慢ならない。
僕は息を切らして廊下を全速力で必死に走った。
通り過ぎる人には申し訳ないが道を譲ってもらった。
「あ、まひろ君ー、頑張れー!」
「走ってることに応援なんて変だからね・・・・・・。」
通りすがりに楓先輩が僕に手を振って言ってからはやと先輩が呆れながらツッコんでいた。
僕は笑って手を振り返しながら過ぎて行った。
「はあっ・・・・・・はあ、っ!」
ガララ!
「っ失礼します、翼先輩いますか?」
「あれ?・・・まひろ君?」
僕は職員室のドアを勢いよく開けてそう言うと横から声がした。
そこには美和先輩がいて後から後ろに陸先輩までいた。
どうしたのだろう?
「お二人はどうしてここにいるんですか?」
「私は先生に聞きたいことがあっただけだよ?」
「俺はついて来ただけっス。」
美和先輩はほがらかに優しく笑ってくれてそう言って教科書を持っていた。
後ろの陸先輩は暇すぎてついて来たところだろう。
そうなんだ......。本当に二人は仲が良いんだな......って、そこじゃない。
翼先輩を探しているんだから。
「・・・っあの、翼先輩って見てませんか?どこにいるか知ってますか?」
本当に人任せではあるが、投げやりにそんなことを聞いてしまった。
二人は顔を見合わせて考える素振りをしてからハッと思い出したように口に出した。
「私は知らないかな。」
「・・・・・・あ、保健室に行ってましたよ?それがどうかしました?」
「え、本当?・・・・・・あ、ありがとうございます。」
◆◇◆
「・・・・・・どうかしたんスかね?」
「あはは、まひろ君も青春してるんだよ。」
陸君はまひろ君の後ろ姿を見送っていた。
私は少しだけ羨ましい気持ちと後輩の恋愛成就のお祈りをしておいた。
「はー・・・・・・アオハルかよ。」
「・・・・・・そうだねえ。」
陸君は感心したように私の言葉の意図がわかったのか頷いた。
私もこの時はまだこの隣にいる人のことを好きになるなんて予想もしていなかった。
何があるかわからないものだね......。
「・・・・・・ところで陸君、何しに来たの?」
「暇ってこともありますけど、美和ちゃんを見つけたから会いに来ました。」
「ふふっ、陸君は上手だね。」
まだこの時は本気にしていなかった。
陸君は女の子にもみんなにもこの態度でとても上手だから。
ただ、もう少し早く気づくべきなんだ。
大人になってからじゃ遅すぎた......。
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