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「あ、楓ちゃんだ。」
はやと先輩はそう言うと陸先輩をなだめてからふらっと、立ち上がり追いかけるように行ってしまった。
その時に見えた。
「あ、本当っスね。俺も行きます。」
「仕方ねえな。まひろも行くぞ?」
「・・・・・・は、っはい!」
楓先輩たちに混ざるように陸先輩も、大輝先輩も行ってしまった。
僕も返事だけしておいて立ちすくむだけで一歩も歩けなかった。
心を射抜かれたようにドキドキと脈が早くなる。
ぐっと唇を噛む。顔が赤い。
見惚れているんだ───。
「───っ翼先輩・・・・・・。」
翼先輩が楓先輩たちと笑って歩いていた。
輝く程の笑顔で通り過ぎて行った。
今にもどうしようもない感情が溢れ出してしまいそうだ。
きっと翼先輩に告白したところで意味がないんだろうな。
今日見たようにあの人たちと同じようにフラれるだけだ。
翼先輩の無敗伝説とやらが更新されだけだろう。
......それなのに、どうしてかな?
我慢すればする程、痛くなる。
僕が我慢すればいいだけなんだから。
これはきっと、あれだ。
あれのせいだから仕方ないのかな?
恋煩いだ。
もしも、翼先輩が誰かを好きになったら......?
きっと翼先輩はその人と付き合うんだ。
一緒に登下校したり、一緒に昼を過ごして......。
手を繋いだり、キスをしたり......?
僕じゃない誰かとその先も進んで......。
急に痛くなった。
さっきのような掴まれるようなドキドキして、翼先輩だけでいっぱいになるような感じじゃない。
抉られるようなズキズキして、翼先輩が見知らぬ男に捕られる姿が脳裏に浮かぶ。
嫌だ。そんなの......。
でもなにもしないままでいいのかな?
このまま見ているだけ......。
「おい、まひろ。」
「っはい!?」
突然呼びかけられて焦った。
どうやら僕が思い悩んでいたら、隣で大輝先輩が話しかけた。
まあ、そうだよね。
ずっと、仁王立ちなんかしてたら変に思うよね。
「なんかあったら言えよ?」
大輝先輩は面倒見がよくて、割と優しい。
甘えるなら今しかない。
大輝先輩に相談するのも一種の手だよね。
「あの、・・・今日の放課後にいいですか?」
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