ドロールゲリープテ

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じろりと痛いほど突き刺さるその視線に負け怖じしてしまう。 いやいや、駄目だよ! だって翼先輩の気持ちも無視するなんて駄目だ。 しっかりと彼女紹介とかの時にでも言えばいいんじゃない? あー......、なんかそれいいな。 にやけそう。やばい。 彼女、彼女、彼女......うん、やっぱり嬉しすぎてやばすぎる。 「まひろ。」 「うん?」 「......さては女だな?」 「......!?」 姉のそのピンチに強いタイプがどうにも憎く感じた。 とはいえ僕は嘘をつけるようなタイプではない。 だから、声がつい上ずってしまう。 「そうなの、ねえ?」 「えええ!?......そんなことないよー!!」 口調が明らかにおかしくなった......。 ああ、もうこれは絶対終わった。 完全に最後までからかわれて苛められるやつだ。 それでなんかよくわかんないけど、みんなに広まって気まずくなるんだろうな。 昔からそうだったんだ。 僕が知られたくないことをバラす。 テストの答案も、小学生の淡い恋も、いつも姉ちゃんにバラされて否定するしかなくて、気まずくなるんだよ。 その場の空気なんて地獄だよ......。 「......。」 「?」 あれ、思ってたより何も言わないんだ。 なぜか姉ちゃんは黙ってしまった。 え、僕なにかしたかな。 不安になって僕は姉ちゃんの肩を掴んだ。 「姉ちゃん?」 「......んで、......。」 「ん?」 急に俯いてしまったかと思うと、ふるふると震えだした。 僕はなんとなく根拠はないものの、罪悪感を感じた。 これって僕がやらかしちゃったの? なんか姉ちゃんの気分とかはわかんないけど、たぶん今までのことから察するに、嫌なことでもあったのかな? 僕は少し屈んで覗くと、ぎょっとした。 「え、姉ちゃん!?」 「......ぅっさい!!」 肩をどんと押されてしまった。 なぜか姉ちゃんは泣いていて、涙ぐんでいた。 やっぱり地雷踏んだかな? 僕は内心呆れながら、踏み込んだ。 「姉ちゃん、どうしたの?」 「......なんでもない......。」 「うん。でも僕はどうでもよくないかな。僕には話せないこと?」 「ぅぅぅ......。」 「わかった、わかった。」 姉ちゃんはよくぞ聞いてくれましたと、言いそうなほど潔く振り向いて 僕に泣きつく。 なんだかこうして見ていると、マスコットみたいな小さなこどもに見えてくる。 ただ少しプライドが高くて、高飛車なだけで、普段はこんな感じだ。 妹みたいだなって思うし、僕としてもおもしろいからいいかな。 姉ちゃんの部屋で少しだけ話を聞くことにした。 「───それで、結局私じゃなかったらしいの。」 「な、なるほど。」 どうやら、さも姉ちゃんを好きな意味深な発言をしていた男友達がいたらしい。 そして、姉ちゃんも意識するようになってしまい、そして恋に落ちてしまったらしい。 そしていざ告白をすると、フラれたとか......。 ざっくりとあらすじだけ聞くと複雑だ。 しかもかなりのプレイボーイという......。 「それに、意味わかんないのよ。チラチラ私のこと見ながら好きな子がいるとか、言い出すし......。」 「......うーん。」 僕もされたら意識しちゃうかなー......。 まあ、男は対象外だし、翼先輩以外の人にされても特に感じないけど。 でも、意味深な発言って......。 それはかなり怖いかな。 僕なら好意を持ってるって、考えるより、真っ先に何か悪いことしたかな、って考えちゃうかも。 「私をその気にさせて、楽しんでたのよ......。」 「わ、わぁぁぁ......。」 とんだプレイボーイだぁ......。 女の子が自分を好いていると考えて喜ぶタイプか......。 それはよくわかんないかな? 僕なら絶対そんなことしない! そうなる前にこっちを振り向かせてみせる! 気づけば姉ちゃんを翼先輩に変換していた。 「......ていうか、なにこの手。」 「ん?」 僕はきっと目の前だと姉ちゃん自身がぐちゃぐちゃに泣き濡れている顔を見てほしくないと思い、隣で座っている。 それに、肩を抱いていた。 とはいえ、簡易的ではあるし、片手で姉ちゃんの肩に手を置いているようなものだ。 あっ。でもこれ翼先輩にしたら意識してくれるかな? 「私じゃなくて、彼女にしてあげなさいよ。それともういい。」 「えええ!?」 そっと優しく振り払われた。 きっと僕に気を遣ってくれてるんだろうな。 こういう時だけ優しいんだから。 でも隣で泣いている姉ちゃんを放っておけなかった。 「いいよ。その代わり、アイスのことは黙ってくれれば。」 「......それが狙い?」 「そうじゃないけど、なんとなく。」 「あんたが弟じゃなかったら、落ちてたかもね。」 「えっ、何いきなり......。」 「うっさい!気持ち悪い!」 こんなだけど、僕の姉ちゃんだなあ。 まあ、姉弟だし、似てない。 それに、気が合うわけでもない。 「あら?二人とも何してるの?」 「ね、姉さん!?」 姉ちゃんが姉さんを見ると、がたっと立ち上がり、涙を拭い、何でもない顔をする。 どこかぎこちない笑顔をしている。 なんだこの感じ......? 「どうしたのかしら?」 「な、なななんでもないよ!?」 「わかったわ!それなら、私の部屋でじっくり話してもらいますっ!」 「いや、それだけは~......。」 あっという間に、居なくなった。 格差のようなものを感じた。 仲がいいんだろうな。 僕なんかじゃなくて、同性の方が話しやすいと思うし。 でも、姉ちゃん嫌そうな顔してたな? それは関係ないかな。 部屋にでも戻ろうかな......。 ♪♪♪~ 「ん?」 自分のスマホが震えている。 画面を見て、驚いた。 なんで、こんな時に......。 もっと早く気づけてたらよかった......。
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