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◆◇◆
「いらっしゃい。」
「お、お邪魔します......。」
翼先輩は昨日とは違い、ラフな可愛らしい格好でふわふわとした黒のワンピース。
しかも肩のところが少し透けている。
僕は少し目のやり場に困った。
そ、そんなことより!
翼先輩の家だあああああ!!
すっごく新鮮だし、なんだかすごいことをしているような......。
みんなの!憧れの!翼先輩の家に!!いるんですよ!!!
なんてことだ......。
僕なんかが入っていいのか?
「まひろ君?」
「何でもないです。」
僕は悪無き笑顔で颯爽と玄関から寝室へと行く。
一階のリビングには誰もいない。
それになんだか寂しい。
家具も少なくて、必要最低限の物しかない。
目で流して僕は翼先輩の後を追う。
二階に上がり、奥の部屋へと急ぐ。
「ごめんなさい。今日一日、私しかいないの。だから気が利かないかもしれなくて......。」
「大丈夫ですよ!そんなことより......。」
翼先輩が言いたかった秘密とは?
僕に隠していたこと。
それがわかればいいんだけど......。
どうにも引っかかる。
なんだろう、この感じ......?
「自由に座ってて。私は飲み物とお菓子持ってくるね。」
「はい。」
なんだろう......?
部屋に入って。
特に何ともない。
エメラルド色を基調とした部屋で可愛らしく、女子の部屋とやらだ。
別に隠すほどのものでもない。
広くて、ベッドも可愛くて、机には教科書やら漫画や、参考書。
それにパソコンまで。
特に何不自由ない部屋だ。
三人暮らしと聞くけれど、チラ見したリビングも廊下も広い。
家が隠したいとかではないのか......?
ということは、翼先輩自身にあるのか?
僕はどこに据わればいいのか迷った末に、ベッドに座る。
「......。」
いや、失礼かな。
だって勉強机に座るわけにもいかないし......。
それにベッドはなんだか......こう......卑しいというか......。
僕は立ち上がり、地面に座ることにした。
うん......。
これでいいよね。
いい匂いするし、可愛いし、それに僕と翼先輩の二人っきりの家だ。
気が狂いそう......。
大丈夫だ、一線なんか越えない!
いいや、越えられないだろうから!!
するとドアが開いて、翼先輩がトレーに飲み物とお菓子を持ち、入る。
「あれ?まひろ君、そんな地面に。ベッドでよかったのよ!?」
「......。」
そっちか!!
やっぱりベッドだったのか!
「いや、でも念のためというか......。」
「大丈夫よ。私も隣に座るから。」
隣に?
ベッドでカップル(仮)が並んで座るんだ。
えっ、いや......。
それっていつでも僕が押し倒したら......。
まあ、そういう展開にも......。
僕は数秒固まった。
いやいや!なに如何わしいこと考えてるんだよ。
違う。
翼先輩は親切に良心で言ったんだ。
それでも僕は俯いてしまって、沈黙した。
きっと顔が赤いんだろうな。
それを見られたくなくて、腕で隠す。
「......。」
「ふふふ。ごめんなさい、からかっちゃって。ちゃんと机があるから。」
「え。」
そう言うと折り畳みの机を出して、真ん中のスペースに置く。
クッションを渡してくれて、その上に座った。
......なんだ。少し複雑。
いや、ラッキーと言おう。
ミニ机を挟んで向かいに座る。
翼先輩はお菓子とジュースを渡してくれた。
やっぱり......そわそわする。
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