22人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
◆◇◆
「それで、話ってなんだ?」
放課後に大輝先輩を呼び出してしまった。
もう誰もいなくなった僕の教室で向かい合って座っている。
大輝先輩は頬杖をついて僕を見てくる。
外は夕暮れ時で部活に勤しむ生徒や下校中の生徒、時々通り過ぎる先生だけ。
大輝先輩は男子バスケットボール部なのに、僕なんかのためにわざわざ休んでしまったらしい。
「・・・・・・あの、本当に部活休んでよかったんですか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「いや僕なんかのためならもっと有効活用してください!」
「はあ?お前が話があるって言うからだろ。」
「うっ・・・・・・。そうなんですけど。」
大輝先輩はとても優しい。
ありがたいんだけど、いいのかな。
けど、僕は少しきょろきょろと目線をさ迷わせていた。
迷惑になっていないか不安だ。
「まひろって臆病者なんだよな、そんなだと一生彼女つくれねえぞ?」
「っ!?・・・・・・。」
ガク......。
「え、あ、マジで?」
僕は机に突っ伏してがくりと肩を落とした。
彼女がつくれないってことは翼先輩も諦めろってこと?
無理だ、死ねと言っているようなものだ。
大輝先輩は図星だったか、と言って呆れた様子だ。
「ぐすっ、知ってます。・・・僕じゃ駄目だってことぐらい・・・・・・。」
「あああ!泣くな、違う、そういう意味じゃないからな・・・!」
僕が縮こまって悟ると、大輝先輩は慌てて立ち上がり言い直した。
大輝先輩は苦笑いしながら宥めてくれた。
「・・・・・・で、なんなんだよ。」
「・・・・・・はい?」
大輝先輩は座り直して膝を立てて笑った。
僕は顔を上げて首を傾げた。
「だからお前が言いたかったことだよ。」
「・・・はい。」
大輝先輩は頭をかいて目を逸らした。
僕は一瞬戸惑ったものの、観念して口を継いだ。
翼先輩のことは諦めきれそうにない。
でも、気恥ずかしい気持ちもある。
呼び出した理由はしっかりとあるんだから。
最初のコメントを投稿しよう!