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僕がしたいことがなんだと聞かれれば頭に思いついていた。
ただ口を引き結んで言えなかっただけ。
「僕は・・・・・・。」
頭の中でわかったつもりで、何一つとしてわかっていないんだ。
今さらいわなかったとて、かわりはしない。
翼先輩を諦めることができない。
一目惚れなんか柄でもないのに。
詰め込んだ感情が扉を叩き、溢れ出す。
「僕は、翼先ぱ───。」
「───それ以上は言わなくていい。」
大輝先輩はため息をつき、僕の目の前に手を止めて制止させた。
「え・・・・・・?」
「それ以上はわかってんなら、俺は止めねえ。」
大輝先輩はにやりと笑い、少し呆れたような苦笑いを浮かべ立ち上がった。
僕は圧倒されてごくりと唾を飲み込み驚き止まった。
「つ、つまり・・・?」
「そのことを纓田に言うべきだ。」
ぱあっと目の前が明るくなったような気がした。
外は暗くなりつつある。
大輝先輩に認めてもらえたこと、誰かが背中を押してくれたこと。
どれも嬉しかった。
「はい!」
僕はそう言って頬が綻び、立ち上がった。
スクールバッグを持って走った。
急いで今すぐに会いたい。会って伝えたい。
翼先輩にとっては見ず知らずの後輩かもしれない。
それでもいいから言いたかった。
翼先輩のことが大好きですって。
「───あ、待て!」
もう僕は教室から出ようとして走りだし、今にも抜け出す気持ちだった。
ふいに大輝先輩が焦ったような声がした。
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