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コイビトイミテーション
君には僕はどう映っていますか?
そのままの僕を......え?そもそも映ってない?
あー、うん。わかっている......。
だって、君は...。
「・・・いいから。俺と付き合ってくれない?」
うわぁ......。
今日も見てしまった。告白現場を。
しかもそれは僕が絶賛片思い中の彼女。
僕は裏庭で見てしまい、なんとなく見てはいけないと考えて身を潜めた。
「なんでですか?」
彼女はわざと同学年でも敬語にした。
その人に今日も軽蔑の眼差し。
彼女はいつもそうなんだ。
自分を女として意識している男を寄せ付けようとしない、でも彼女は誰が見ても惚れてしまうくらいに女性らしく華奢な身体に少し大人っぽい。それに可愛くて美しい。
だから僕は一目惚れをしてしまった。
きっと僕以外にも彼女を好きな人は沢山いる。
それでも僕は恋をした。
彼女は先輩なんだと知らずに。
「お願いだからさ?」
「嫌です。」
相手の男はモテていて人気が高い。
チャラいイメージがあるけど僕は話したことはない。
彼女は即答で拒否するけど。
男もだんだんと諦めで顔が滲む。
「一回だけでもいいから、ね?」
「一回の前にあんたを男として見たこと一度もないから。あんたにこれからも一生もない。わかったら早く行って。」
彼女は目が据わっていて完全に蔑む顔をしていた。
彼女はいつものごとくフる。
むしろOKしたことがないんじゃないかと疑うくらい。男は早々に立ち去る。
「はぁ・・・・・・。」
彼女はため息をついてその場から歩き出して行ってしまう。
また僕も安心してしまう。
いつ彼女がOKするかわからないからだ。
不安なんだ。自分は何もしていないのに誰かに捕られてしまうなんて考えてばかりで何も行動に出せていない。
纓田 翼(おだ つばさ)高校三年生、
僕の二つ上の先輩。
そして翼先輩は知らない、密かに想いを寄せている後輩なんて。
僕の一方通行の片思いなんだから。
佐藤 まひろ(さとう まひろ)高校一年生の僕。
僕は誰もいなくなった裏庭の影でボソリと言葉を溢した。
きっと僕は頬が赤くなり俯いて放った。
僕は意気地無しで見ているだけしかできない。
だから本来ならば翼先輩に言うべき言葉。
「・・・・・・翼先輩、好きです。」
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