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さほど時間は掛からずに、出口らしき明かりが見えてきた。
奥になるほどトンネルは広くなって、匍匐前進から屈みながら進めるくらいにはなっていた。一旦外していたボウガンをまた背中に装着する。
出口への道を何かが塞いでいた。向こうから無理矢理押し込んだみたいにそれはあった──折り畳まれた、白いグライダー。
火事で焼けなかったんだ! 僕は力を込めてそれを出口へ押しやった。
グライダーは軽々と動いて、僕と共に窮屈な空間からポンと飛び出た。
その拍子に、どういう仕組みか分からないけれどグライダーの羽がバタバタバタと広がって、勝手に本来の姿になった。
煤を少し被って所々黒くぼけている以外は、特に故障はしてなさそう。
もしかしたら使う時があるかもしれない、と少し端の方へ寄せて、僕は改めて辺りを見回した。
日記の通り、広いテラスに出たのだ。執務室のそば、と書かれていたっけ。
どの部屋? と視線を180°回す間に、アーチ型の大きな窓が目についた。
そのガラスの向こうに人影が…目をよく凝らす。
その時、雲が切れてサーッと月光が射し込んで、中の様子がよく見えたんだ。
「───」
シーナが。
シーナが頭部血まみれで、何か丸太みたいなものに縛り付けられていた…!
その傍に二人の男。後ろ姿しか見えないが緑色の髪のひょろっとした男と、ちらっと横顔を覗かせる巨体の男。
大男の方がシーナの顎を無理矢理掬って、舐めずるような気持ち悪い視線をよこしているのを見て、僕の中の何かがプツンと切れた。
気付いたら背中のボウガンを抜いて、とっくに矢を放っていた。
──シーナに近づくな、触るな!!
こんなに怒りを込めてボウガンを放った事はない。
…
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