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両腕が肘からぶらんと垂れ落ちそうになったのを、必死で止めた。
縄が切れたのをゼノス達に気付かれてはダメ。
私は縛られたフリをしながら、サザンとゼノス兄弟の対峙を見つめた。
あの二人の視線がこちらから外れる隙を見つけなければ。
「くっくっ…小僧、そんなに矢を放ってばかりでいいのか…?
そろそろ…尽きる頃ではないか…?」
ゼノスがじりじりと近付きながら嫌な笑いをすると、サザンは一瞬腰に付けてある矢入れの筒を触った。
ゼノスの言葉が図星だったのか。
あの筒にはあと何本の矢が入っているんだろう?
私は、これまでサザンが放って突き刺さった矢の場所を目で追った。
──私があれらを拾い集めて、サザンに渡せたら!
自分の役割を見つけて、急に力がみなぎった。
サザンがまたボウガンを放って、二人の注意が少しの間だけ向こうへ行った。
私は背中の丸太に擦り付けながら腰を落として、後ろ手で足を縛っている縄を切りにかかった。
それに気付いたサザンが、二人の目に私の行動が写らないように、わざと二人の方へ突っ込んでいった。
その行動に私は慌てる、ダメ、サザン、危ない。
気が急いて、プツッと縄が切れたのはよかったけど、同時に手が滑ってナイフをカランと落としてしまった。
その音がすごく響いて…ゼノスとガルバがギロリとこちらを睨んだ。
「ゼノス兄ぃ、王女のやつ、縄を抜けやがった!」
「ガルバよ、取り押さえろ!」
「シーナ、逃げて!!」
三人が同時に叫ぶのを聞きながら、私は落ちたナイフをまた手に取って、ボウガンの矢を拾いにかかった。
…
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