〈13〉決着する王女の目線

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 1、2…5本まで、拾う事が出来た。  サザンを振り返ると、サザンはゼノス兄弟を振り切って私の一番近い所まで走ってきていた。 「サザン…ッ」  頭からの血がまた滴り始めたけれど、気にしてられなかった。  私もサザンの方へ走って、矢の束を持つ手を目一杯サザンへ伸ばす。  サザンも手を目一杯伸ばす。  サザンの手の平が矢を受け止め、しっかりと握り拳を作ったのを見届けた。  と、その瞬間、私の視界が突然真っ逆さまになった。  ガルバが私達に追いついて、私の右足首を掴んで吊し上げたのだ。  そしてサザンも、後ろからゼノスに杖で首を固められて、渡された矢の束はしっかり握っていたけれど、弓を床に落としてしまった。 「手こずらせてくれたな…これで何も出来まい」  ゼノスは口元を歪めながら、弓を思いきり蹴飛ばした。  弓は回転をしながら床を滑って、私とガルバの近くで止まった。  手を伸ばせば…届くかもしれない。  私は反動をつけて少し体を揺らして、弓の方へ手を伸ばした。  しかしガルバがそれに気付いて、足首を握る手に力を込める。  痛いっ…!!  逆さにされて全身の血が脳天に集中する、床にポタポタと垂れるのを、意識が朦朧としている中見つめた。 「ゼノス兄ぃよ、お遊びはここまでにしようや」  ガルバがふざけて舌を出しながら言った。 「ふ…っ、お前の言う通りだ…茶番劇はおしまいだ…」  ゼノスは杖を更にサザンの首に食い込ませた。  シーナ、サザンの口の動きでそう言ったのが分かったけれど、喉を潰されて声にならなかった。 「ガルバよ、お前の手で憎き黒の血を絶やすのを、私とこの小僧に見せつけよ…!  小僧よ、漆黒の一族に関わった不運を呪うがいい…  そして、自分の無力さを思い知るのだ…!  ふはは、はははは…!!」  ゼノスが気が狂った声でそう叫んだ時。  グライダーが突っ込んで割れた窓から、ビュウゥと強い風が吹き込んで、ガラスの屑が舞った。 …
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