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窓の外を見ると、さっきは月明かりが差していたのにすっかり暗くなっていた。
厚く黒い雲が空を覆い、風が唸り、ゴロゴロと遠くで音も鳴っている。
吹き込んできたその風は湿気を含んでいて、ガラスの屑を飛ばして私達の肌を傷つけた。
「うぬぅっ…」
ゼノス兄弟がしきりに目を擦る、私とサザンを締め付ける力がふと抜けた。
その隙を狙って、私達は脱出を試みた。
「逃すか…っ」
彼らは目を細めながら体勢を整える。
「…っ、げほっ…」
喉を強く押さえられているサザンが、何か言おうとしていた。
ゼノスはそれを見て嫌らしく笑い、
「くっくっ…冥土の土産に何か言い遺すか…?」
さも同情の姿勢を見せつけて、サザンの口元に耳を寄せた。
それにより、杖がサザンの喉から少し浮き上がり、サザンは潰れた声を少しだけ出せた。
「…あ、あんた達が、
城の運び屋なんだろう…?
森の…おばあ、さん…
…心配してる…
…伝えて、くれっ…てさ…」
「───」
サザンのこの言葉に一体どれだけの力があるというのだろう、ゼノス兄弟が明らかに動揺を見せたのだ。
そして、まるで彼らの今の心境を例えるように、ピシャアン。
雷光が降り注ぎ、ズドンと衝撃が走った。
こんなに大きな城が地震の様に揺れて、バリバリと空の割れる音が耳をつんざく。
その拍子に、ゼノス兄弟は私達の身を離した。
これが絶好の瞬間で、見逃してはいけない、生と死の分岐点だった。
私とサザンは同時に思ったに違いない。
今、やらなくては…!
「──ぎゃああぁ!!」
ゼノス兄弟の悲鳴が、吹き込む風と共に、この書斎の空間に渦巻いた。
私はサザンのボウガンの弓を拾い上げてガルバの脳天に強打し、
サザンは握っていた矢の束をゼノスの太ももに突き刺したのだ。
…
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