〈13〉決着する王女の目線

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 窓の外を見ると、さっきは月明かりが差していたのにすっかり暗くなっていた。  厚く黒い雲が空を覆い、風が唸り、ゴロゴロと遠くで音も鳴っている。  吹き込んできたその風は湿気を含んでいて、ガラスの屑を飛ばして私達の肌を傷つけた。 「うぬぅっ…」  ゼノス兄弟がしきりに目を擦る、私とサザンを締め付ける力がふと抜けた。  その隙を狙って、私達は脱出を試みた。 「逃すか…っ」  彼らは目を細めながら体勢を整える。 「…っ、げほっ…」  喉を強く押さえられているサザンが、何か言おうとしていた。  ゼノスはそれを見て嫌らしく笑い、 「くっくっ…冥土の土産に何か言い遺すか…?」  さも同情の姿勢を見せつけて、サザンの口元に耳を寄せた。  それにより、杖がサザンの喉から少し浮き上がり、サザンは潰れた声を少しだけ出せた。 「…あ、あんた達が、  城の運び屋なんだろう…?  森の…おばあ、さん…  …心配してる…  …伝えて、くれっ…てさ…」 「───」  サザンのこの言葉に一体どれだけの力があるというのだろう、ゼノス兄弟が明らかに動揺を見せたのだ。  そして、まるで彼らの今の心境を例えるように、ピシャアン。  雷光が降り注ぎ、ズドンと衝撃が走った。  こんなに大きな城が地震の様に揺れて、バリバリと空の割れる音が耳をつんざく。  その拍子に、ゼノス兄弟は私達の身を離した。  これが絶好の瞬間で、見逃してはいけない、生と死の分岐点だった。  私とサザンは同時に思ったに違いない。  今、やらなくては…! 「──ぎゃああぁ!!」  ゼノス兄弟の悲鳴が、吹き込む風と共に、この書斎の空間に渦巻いた。  私はサザンのボウガンの弓を拾い上げてガルバの脳天に強打し、  サザンは握っていた矢の束をゼノスの太ももに突き刺したのだ。 …
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