〈13〉決着する王女の目線

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 風向きが落ち着かないまま、グライダーは空中でクルクルと旋回する。  凧のしっぽの様にぶら下がるサザンと私は操縦する術などなく、風任せになるしかなかった。  やがて風向きが定まって、私達は城から離れた方へ飛ばされた。  でも所詮ひとり乗り、段々と地面が近づいて、園庭の所でグライダーは不時着した。  グライダーが私達に覆い被さる。  サザンがそれを横へ放って、サザンと私を繋いでいた命綱を解いた。  磁石が反発するみたいに私達の身体が離れて、同時にへなへなと腰を落とす。  もう火は届かない。遠くで城が燃え盛る。 「シーナ。  シーナ。  生きててよかった…っ」  そう言ったサザンの目には、涙が溜まっていた。  流れたようにも見えたが、違った。また空から雨が落ちてきて、その雫がサザンの頬を伝ったのだ。  サザンの言葉で、色んな事の決着がついたのだと感じる。  そしたら、今まで胸に閉じ込めていた思いが、一気に溢れ出した。  サザン。  サザン。  私。  私。 「ごめん、  サザン、ごめん、  ザザが死んじゃった、  私の身代わりになって死んじゃった、  ザザを家に帰してあげられなかった、  ああああ、  ザザ、ザザ…!!」  それこそ子供のように泣きじゃくった。  私の頬にも雨が打って、涙と水でぐしゃぐしゃになった。 「シーナ、  シーナ、  シーナのせいじゃない、  シーナのせいじゃない…っ、  うああ、  ああああ…っ!!」  きっとサザンもずっと水面下で我慢していて、たがが外れたに違いなかった。  私の耳の横をサザンの両手が通り過ぎて、立ち膝で私の頭をしっかり抱え込んだ。  空をやや仰ぎながら嗚咽が止まらないサザン。  その声は雨音と私の叫ぶ声で掻き消されたが、サザンにくっついているから骨を伝う振動で手に取るように分かる。  サザンが私の頭を抱える強さと同じに、私もサザンの腰を抱き締め、片方の手をサザンの背中に押さえつけるように置いた。  雨が強まり、止血の布がじんわりと血に滲んでも、涙が枯れるまで、私達はそのままだった。 …
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