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〈終〉新たな日々の少年の目線
その後のシーナと僕は。
涙が枯れたと同時に雨も上がったのだけど、僕達はいつまでも立てないでいた。
でも、シーナの頭をずっと抱えたままなのがたまらなく恥ずかしくなって、パッと両腕の力を分散させた。
自分の身体を預けていたものが急になくなって、シーナは不思議そうな顔をして僕を見上げる。
その拍子に僕の腰を巻き付けるシーナの腕も、スルッと抜けた。
今、ちょっと、シーナに顔を見られたくない。
そう思って視線をずらそうとしたその時、
「…姫様? 姫様なのですか…!?」
しゃがれた男の声がどこからか飛んで、シーナと一緒にキョロキョロすると、外壁沿いの垣根から老人と、若い女の人と、中年の男が2、3人、こぞって出てきたのだ。
「あ…じいや…? イオも…」
シーナの精魂尽きた声を聞くなり、
「姫様あーー!」
二人は涙ぐみながらシーナに飛びついて、僕を突き飛ばした。
「はっは、大丈夫か坊主?」
軽く吹っ飛んだ僕は、連れの男のひとりに背中から支えられた。
それに気付いた、イオと呼ばれた女の人がごめんなさいと慌て、僕とシーナを交互に見て言った。
「…こちらの坊やは…?」
「サザン…
ザザの弟よ…
ずっと、お世話になってた…」
この言葉を聞いて、シーナは全てを思い出したんだと悟った。
…
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