〈終〉新たな日々の少年の目線

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 その数日後、漆黒城の修繕工事が始まった。  工事に参加する者は50名を超えて、クルーとお城を繋ぐ抜け道を行き来した。  お城で缶詰めは出来ず、ローテーションでクルーへごはんを食べに戻る。  おかみさんを筆頭に、快復したシーナとイオさん達クルーの女性陣が日中夜炊き出しを頑張ってくれていた。  ベスタおばさんとアルテはルニアに帰ったが、時々様子を見に来てくれた。  僕はというと男達に混ざって、でも建物の修繕は大人達に任せてと言われてしまったので、主に後片付けに精を出した。  焼かれてしまった人達の弔いは…きつかったが、最後までやり遂げた。この中にねえさんがいたはず。  炎をまぬがれた園庭の隅に大きな墓石を建て、鎮魂した。  それから、あの秘密の部屋もまだ無事だったので、ねえさんの遺品を…日記のノートと、シーナとザザの絵画を回収した。  シーナに持っていてもらおうと渡したけれど、日記を一通り読んだだけですぐに返された。 「サザンが持っていて。ザザの形見だよ。  私には…これがあるから」  そう言って、シーナは片耳の赤いピアスをそっと撫でた。  あともうひとつの気がかり。  工事の最中に僕はひとり抜け出し──地下道を通って、ゼノス兄弟の育ての親のおばあさんの家を訪ねた。  彼らが炎に焼かれた事、そのままに言おうか。それとも工事中の事故に遭って、と濁そうか。どうしたものかと思っていたのだけど、  …おばあさんの家はもぬけの殻だった。  売り物だと言っていた、壁に掛けられた織物は全て取っ払われていた。  ゼノス兄弟、あの炎から逃げ延びたんだろうか…  おばあさんと一緒にこの地を逃亡したのなら、それはそれでいい。  そんなこんなで、森の雨季が終わり、工事はまだ終わらなかったけれど、生業の猟を再開するために僕と親方とおかみさんは家へ帰った。 「こっちの方は私達で最後まで頑張るから。落ち着いたら、また逢おうね」  と言うシーナと、一旦の別れをした。 …
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