〈終〉新たな日々の少年の目線

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 そして、気がつけば──シーナと出逢ってから1年近くが経っていた。  漆黒城の修繕が完了してから大分空いた。僕達は手紙を送り合っていたけれど、あれから逢ってなかった。  シーナは、お父さんのお付きだったじいやさんから城主としてのあれこれを学びながら、ねえさんの代わりに侍女となったイオさんを従えて日々奮闘している。  僕は、猟師としての本分をこなす傍ら、実はある事を計画中でアストラおじさん達の研究も手伝っていた。  そんなわけで僕もシーナもかなり忙しくしてて、足を運んでる暇がなかったのだが。  …僕は今、シーナから譲り受けた黒いグライダーを風に乗せて、漆黒城へ向かっている。  僕の家に来たシーナ宛の手紙と、おかみさんお手製のお弁当をたっぷり持たされて、 「積もる話もあるだろう、ゆっくりしておいで。シーナによろしく言っといておくれ」  親方とおかみさんにそう見送られたのだった。  本日快晴、飛行日和だ。穏やかな気流がグライダーをお城へ導く。 「あ…見えてきた」  あんなに煤だらけで真っ黒だったお城は、太陽に照らされてキラキラと白光りしていた。 「おー、サザーン」  園庭にクルーのヘクトルさんがいて、大声で僕に呼び掛けた。  ヘクトルさんはイオさんにくっついてクルーを出てきたのだ。今では立派な庭師。 「シーナなら執務室で籠ってるはずだぜ」 「そう、ありがとう!」  僕はヘクトルさんに手を振り、執務室のある棟へと方向転換した。  執務室の広いバルコニーに着地すると、窓の奥からひとつの人影が近づいてきた。  パタパタと足音を立て、ガチャッと勢いよくアーチ型の大窓を開け放ったのは、 「やっぱりサザンだ! よく来たね」  黒髪が肩スレスレの所まで伸びた、城主らしく身なりを整えたシーナだった。 …
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