〈終〉新たな日々の少年の目線

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「シーナ久しぶり。元気だった?  ってこないだ手紙貰ったばかりだから知ってるけど(笑)」 「うん元気元気。サザンは?  ていうか、サザン、見ない間に随分背が伸びたね! 私の肩まで届かないくらいだったのに」  そう、この何ヶ月かの間に、頭のてっぺんがシーナの目線に来るまでに僕の背丈は伸びた。  アルテの身長もとっくに抜かしていて、「まー生意気! サザンのくせに!」とよく罵声を喰らってる(笑) 「へへへ。その内シーナを越すから。見ててよね」 「ふふ」  シーナは柔らかい眼差しで僕を見て、それから背後の黒いグライダーに視線を移した。 「グライダー、見つかってよかったね。  おじさま、綺麗に直してくれたんだね…あれ、もしかして、ちょっと大きくした?」 「あ、分かる? そうなんだよね。かなり破損が酷くてね…シーナが来た時のよりもっとだよ。  僕の体もまだ大きくなるだろうから、いっそ大人でも乗れる風にしたらって、おじさんが言うからさ。  ごめんね、勝手にいじって。シーナから貰ったものなのに」 「いいんだよ。ずっと使ってくれるのなら…サザンのいいようにして。  あっ、それなに?」 「これ? おかみさんのお弁当。僕達で食べろってさ」 「わあい! おかみさんのごはん、久しぶり!  折角だからここで食べよう。ねえイオー、デッキテーブルどこだっけ?」  そう言ってシーナは一度室内に引っ込んで、イオさんと一緒に重たそうに畳まれたテーブルを運んできた。  組み立てるのを僕も手伝って、イスもセットして、お弁当のお重を並べた。  「お茶を淹れてまいりますね」とイオさんが離れた時に、あっと僕は声を上げた。 「そうだシーナ、これ。  エルさんからの手紙、何で未だに僕ん家に来るのさ? お城の事、まだ教えてないの?」  若干呆れながら、僕は手紙をテーブルの上に置いた。 「あは、ごめんね。クルーにいる時に一度手紙を出してるんだけど、その時は記憶が戻った事しか書いてなくて。  いつお城に移れるかなんて分からなかったし、エルさんも別の国へ移動するところだったから…  しばらく手紙送れそうにないって事はお互い了承済みなの。  全部が終わって落ち着いた後で、次のエルさんの手紙が来たら詳しく書こうと思って」  面倒かけてごめんね、と謝りながら、シーナはエルさんの手紙を開けて黙読した。 …
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