〈1〉空へ発つ王女の目線

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〈1〉空へ発つ王女の目線

 ───。  ───。  ───。  微かに伝わる、遠くの乱騒。  微かに鼻につく、火薬の臭い。  細い下弦の月明かりだけが頼りの、城で一番高い塔の薄暗い小部屋で、私はひとり息を潜めていた。  ここで待つように…今まで生きてきて全く知らなかった部屋で言われて、そうしているのだけど…いつまで?  王族の着衣を心臓の辺りで握りしめる、その手は震えていた。  本当はママのそばにいたい、先月亡くなったばかりのママ、毎日寄り添うようにお墓にお花とお祈りを捧げていた。  パパもまた心配…数年前から少しずつ衰弱していく身体に鞭を打って、今晩もまた公務に追われて息もつけないんだろう。  ママが亡くなってから一層、我を忘れて動いているように見えた。  その事と、遠くの騒ぎが、何か関係しているんだろうか?  今にもその現場に駆けつけたい思いでいっぱいなのに、パパが私をここに連れるように言い付けられたと聞いて、それにおとなしく従う他なかった。  城に包まれた異様な雰囲気を感じながら更に祈っていると、重々しい木造の扉が勢いよく開かれて、そうした張本人の声に私は振り返った。 「シーナ」 …
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