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私という存在
例えば、クラスの中に3つのグループがあるとして。上位グループはクラスを牽引するような目立った存在で。中位グループは目立つこともあれば大人しくしていることもある中立的な存在で。下位グループは一切目立つことなく息を潜めて周りの様子ばかり窺う存在で。
私はその最も下である下位グループに含まれていた。地味で人見知りで教室の隅で小さくなっているような空気みたいな存在。親友と呼べる人はいなくて、大体いつも1人だった。
でも別にいじめられているわけではないから、学校に行くこと自体は苦ではない。ただ少し、女子高生というキラキラした日々を無駄にしているだけ。
その状態のまま入学して1年経って、2年経って、あっという間に3年生になった。周りのみんなは何かが変わったようだけど、私は何も変わらない。変わることはない。そのまま卒業まで、きっと私は陳腐な毎日を惰性で過ごすのだろう。朝起きて学校に行って椅子に座って退屈な授業を受けて家に帰って。
そして3年生になった今は、現実逃避したい進路のことで頭を悩ませるようになるのだ。就職するにせよ進学するにせよ、将来の自分を思い描けない私は、結局先生に勧められるがまま進路を決定してしまうのだろう。まだ少し先の話だと思っていても、その日は必ずやってきて、私は差し出された多くの選択に迷ってしまうんだ。
自分のことなのに分からなくなって、そんな自分が嫌になって。やっぱり私は何も変わっていない。入学した頃と何も変わっていない。自分の意見が言えなくて、いつも周りに流されるがままなんだ。これからもずっと、それは変わることはないんだろう。変えられないんだろう。
自分の意見を堂々と言って、クラスを引っ張っていける上位グループの人たちとは、まるで月とすっぽんの差。雲泥の差。どうやったって、私はそんな立派な人間にはなれない。
きっと永遠に下位グループに属したままの私は、せっかく3年間ずっと同じクラスだった人たちとろくな会話もできずに、ひっそりと卒業していくのだろう。そう信じて疑わなかった。
だけど、連絡事項の時以外ほとんど呼ばれたこともない自分の名前を、上位グループに属する月のような存在の君が何度も呼んでくれて。すっぽんの私は突然当てられた月の光に戸惑うだけで、やっぱりまともな会話はできないけど、それでも君は私に話しかけてくれて。
同性ともあまり話したことのない私が、異性の君と辿々しいながらも話すようになってしまったら、君に少しずつ惹かれていくのはきっと必然で。でも君と私は月とすっぽんだから。決して埋められない差があるから。もし同情で話しかけているのなら、今すぐにやめて。変わっていく日々や気持ちを実感して、もう引き返せなくなりそうなんだ。
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