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現実離れしている話でぴんと来ない。
「……それで、そいつが今度は何やったんだ」
『今もストーカーみたいになってて、夕べも襲ってきたんだって』
「襲う? そいつ、バカか? 犯罪になるだろう!」
『もうそんなこと考えてないだろうって言ってた』
(俺に電話してきたってことは、何か頼みたいんだな?)
「千枝、俺に何かしてほしいんだろ、だから電話くれたんだろ?」
『忙しいの分かってるからどうしようと思ったんだけど』
「なに、言ってんの? 今はそんなこと言ってる場合じゃないよ、あいつは弟みたいなもんなんだ。こういう時に助けなきゃ俺は兄貴って言えない」
『ありがとう……』
泣いている。状況はよっぽど切迫しているに違いない。
「具体的にどうすればいいんだ?」
『三途さんがね、言ったの。「いっそのこと、誰か『俺の恋人に何するんだっ!』ってアイツをぶっ飛ばしてくんないか」って』
(なるほど、ね……)
「分かった。千枝はもう心配しなくていい」
『どうするの?』
「任せろって。この後も研修だ。ちょっと電話に出られないかもしんない。でも心配要らないからな」
研修の教室に向かう。講師はパソコンで何かを打っていた。
「すみません、腹痛いんです! トイレ行って来ていいですか?」
「それは構わないけど。どうする? 早退するか?」
「ちょっと様子見たいです」
「いいよ、慌てなくていいから」
「ありがとうございます!」
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