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   走ってくる足音が聞こえた。 「ごめんねっ、遅くなっちゃったっ!」   姿より先に声が聞こえた。 「哲平くん、私やっぱり……」  千夏の足がピタリと止まった。 「坂本くんがなんでここにいるの?」  真剣な顔に哲平は慌てた。 (一人で来た方が良かったか!) 「あのっ、付き添い! ただの付き添いだから、気にしないで」 「付き添いって……私のことを好きだって言ってたよね? よく知ってるヤツだって」 「そうだよ、俺に哲平が付き添いをたの……」 「哲平くん、ありがとう! 坂本くんも……ずっと自分からは言えなかった、好きだって」 「千夏ちゃん……」 「でも哲平くんのお蔭で勇気、出た! 私も好きよ、坂本くん!」 「え?」 「え?」  隆と哲平の声が重なる。  状況を掴むのが早い哲平。隆が口を開く時にはもう言葉が出ていた。 「良かった! 隆、マジ惚れだって言ってたよ。千夏ちゃんと両思いじゃん、良かったな、隆!」 「ちょっと来いよ!」  隆に引っ張られて千夏から離れた。 「なに、言ってんだよっ! せっかく告るとこだったのに」 「あの顔、見ろよ」  言われて千夏の方に振り返る。赤く染まった嬉しそうな笑顔。 「お前、本気で言ったじゃん、マジに好きなんだって。このヤロー、大事にしろよ」 「だって、哲平……」 「俺、あんな顔させらんないと思う。あの笑顔見れただけでいいや。じゃな」 (本物って、会えるのいつだよ…… 母ちゃん、俺充分振られ慣れたんだけど……)  哲平が本物に出会う日はまだまだ遠い。  
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