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花と澤田の歓迎会。相変わらず花に寄っていく哲平に花は辟易していた。
「俺、あんた嫌いなんですけど」
「みたいだな」
「分かってんなら」
「だからさ、分かり合おうぜ。お前って放っておけない感じがする」
哲平には男兄弟がいない。
(こんな捻くれもんでも後輩だしな。どっか可愛いし)
姿形のことじゃない、ムキになって自分に突っかかってくる花を相手にするのが楽しい。
「言ってること分かんない。放っておいていいです」
「お前、可愛くないとこが可愛いなぁ。楽しいよ、お前といるとさ」
「楽しい? あんたおかしいんじゃないの?」
「面白いだろ? 俺って。仲良くやろーぜ、俺たちでタッグ組もう」
業を煮やした花は新人の余興で哲平を前に呼び出した。
「なんだ、俺がいなきゃだめか?」
嬉しそうに言う哲平。
「俺の手を掴んでください、どっちの手でもいいから」
「手? こうか?」
掴んだ時には背中が床についていた。
周りは歓声を上げ拍手をしている。お辞儀をして立ち去る花に後ろから飛びついた。
「このヤロー! 投げるなら投げるって言え!」
「言ったら逃げるでしょ」
「誰が逃げるか、お前の腕を掴まないだけだ」
「それじゃ余興になんないし」
プレゼンを二人でやらされたり、哲平のために課長やチーフに食ってかかったり。
千枝と同じだ。気がつけば相手がいないと物足りない二人になっていた。
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