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ちょっと引っ込んだところにあるコンビニ。入ってすぐに千枝はカゴを持った。
「千枝、あのさ、どういうのでもいい?」
(何が……ビールかな?)
「いいよ、哲平さんの好きなので。私もそれでいい」
(千枝っ! 大胆っ!!)
さすが、『童貞か?』と聞いただけあると、哲平は妙に感嘆した。けれど千枝を『そこ』に行かせるわけにはいかないと、哲平は一人『その場所』に向かうつもりだ。
「千枝はあれこれ選んでおいて。今日は冷凍ものしか無いんだ」
「分かった。なんでもいい?」
「任せる!」
(げ! こんなに種類があるの? 最近はすごいな……)
コンドームのこういう流行の尖端を知らないから、必要以上に手に取って見比べる。もはや周りの目を気にしていない。
(匂い? そんなのどうすんの?)
そうは思いつつ、その中の一つに決めた。幾つも買ってもしょうがない。いや、本当はいくつあってもいいと思ってはいるが、初っ端からその気満々を見せるのもどうかと思う。
「どれにしたの?」
千枝が覗き込もうとするから「ここじゃだめ!」と止めた。
「もちろん家に帰ってからよ!」
即答に驚いたのは哲平だ。
(こんなところで飲むわけ無いじゃない)
ビールは家で飲むものだと千枝の考えているのはそっちだ。
千枝のカゴを取り上げるとさっとその底の方に突っ込んだ。
(そうだ、飲み物……)
カゴの中に無いのを見てビールを取りに行った。
「千枝、なんでもいい?」
「え? いいって言ったけど」
「そうだっけ?」
明日が壮行会。だから飲み過ぎるわけには行かない。あまり遅くなってもいけないだろう、千枝のマンションまで送りたい。
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