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   隆が戻ってきた。慌てて立つ。 「親父さん、喋った! お前の名前呼んでた!」 「え? ホント!?」 「そばに来いって!」  立ち上がって隆に席を空けた。そこに座って父の手を握る隆が霞んで見える。 「俺、分かる?」  しばらくじっと見て、哲平に目を向けた。 (おじさん、間違えんなよ、それじゃ隆が可哀そうだよ) また隆に目を移す。ゆっくりと引き攣ったような笑みが浮かんだ。 「いうう、い、いうう」 「まだちゃんと喋れないみたいなんだ。良かったな! 親父さん、しっかりお前のこと分かってるよ!」  安心して部屋から出た。椅子に座って頭を天井に向ける。 「良かったぁ!」  勝子が大きなビニール袋を提げて帰って来た。 「買ってきたよ、いつも何でも食べるからお前の好きな物分からなかったよ」 「食えりゃ何でも好き」 「お前はどんな世界でも生き抜きそうだね」 「それよりおじさん、目覚ましたよ! 隆の名前呼んだんだ!」 「バカ! 先にそれをお言い!」  行こうとする勝子を呼び止めた。 「今は二人にしてやってよ」 「……そうだね。後で二知花があんたに差し入れ持ってくるよ」 「わ、やったっ!」 「その内いくつか一知花の作ったものが入ってるってさ」 「げ! ロシアンルーレットかよ!」 「良かったね、2種類味わえるってことだよ」 「それ、有難くない……」   
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