5

14/14
291人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
   しばらくして出てきた隆は泣いていた。 「どうした!? なんかあった?」 「俺のこと、ちゃんと分かってる……哲平、ちゃんと分かってくれた……」  抱きついてわぁわぁと泣く隆を強く抱きしめた。 「そりゃそうさ、出来の悪い息子をあんだけ大事にしてくれたんだからな、忘れるわけないって!」  頷きながらそれでも泣き止まない隆を見て、勝子も目を抑えた。  叔母さんという人は、隆が言う通り本当にいい人だった。勝子に何度も頭を下げ、哲平の手を握った。 「ありがとうございます。これから先のことは隆と相談しながら考えていきます」 「良かったねぇ、隆。これで本当に安心だね」 「うん! おばさん、哲平、ありがとう。哲平、明日の卒業式ちゃんと出ろよ」 「お前、やっぱり出ないのか?」  叔母さんが隆の腕を握った。 「出席しなさい。私がお父さんのそばにいるから。卒業式は出ないとだめよ」 「いいの!?」 「もちろんよ! もう後は良くなるだけなんだから。安心して出なさい」 「やったな!」 「行くよ、おばさん、ありがとう!」  久しぶりの隆の晴れやかな顔。 「お前、トイレでスッキリした後みたいな顔してる」 「バカ! もうちっといい例えないのかよ!」  それもこれもほっとしたからこそ出た言葉だ。みんなで笑っているところに二知花が来る。  ロシアンルーレットで当たるのはなぜか哲平ばかり。 「不味っ! これ、一知花姉ちゃんだ!」 「哲平、よっぽど一知花が好きなんだね」  そう言う勝子もいくつか一知花爆弾を食べて「料理を教え直さなくちゃならない!」と息巻いた。   
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!