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   また話が途切れる。哲平は足元の石を蹴った。 「まだ日にちあるんだよな」 「2週間。ごめん、ギリギリまで言えなかった」 「いいさ。その内また会えるって。俺がそっち行ったっていいしな。そん時は泊めてくれよ。ウニとホタテとカニが食いたい」 「お前っていっつも食いもんの話ばっかりだな」 「北海道って言ったらそれだよ、お前が羨ましい!」 「おい、それ食いに行くわけじゃないからな」  土曜ということもあって、空港には宇野家総出で見送りに行った。みんな良く知った間柄だ。笑顔で見送る。隆も笑顔で手を振った。まるで旅行に行くのを見送るような。特に涙もなく、『気をつけて』と言う言葉で。 「別れんのっては、あっけないもんだね」  哲平の言葉に彦助は足並みを揃えた。もうすぐ家に着く。 「あそこまで仲良くなるのにすごく時間かかったのに、もう隆とは滅多に会えなくなるんだなって」 「それで終わりにするかどうかはお前たち次第だと思うよ。距離が離れるとつき合いっていうのは難しくなる。それは普通のことだ。寂しいがな」 「こういうの……俺、初めてだし。隆にどういう顔していいか分かんなかった。2週間、あっという間でさ、実感湧かないしあの家に行けば隆が間抜けな顔で出てきそうな気がするし」  彦助は哲平の肩を叩いた。 「しばらくは悩むしかない。誰かにアドバイスもらえるようなことじゃないんだから」  友人との別れは誰にでも起き得ることだが、哲平にとっては初めてのことだった。隆も新しい環境に溶け込もうと必死だし、そのためには新しい友だち作りが必要だ。それが分かるから電話をかけるのも遠慮がちになっていく。少しずつつき合いにひずみが生まれるのを感じたが、どうすることも出来なかった。  時間が経つにつれ、その意識さえ徐々に薄れていく。学年が変わり、クラスが変わり、増えていく友人。何か大事なものを失くしたような気持が心の中に風を生む。  
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